しっかり見るべき現実

泣きそうになる弱い自分を
心のなかで叱咤しながら
気持ちを奮い立たせて向かった。
ようやく、向かった。



「思い出してもらえるかな」
「どんな状態なのかな」
悪い方向に考えてしまうのを必死に振り払って
忙しそうな街中を抜けていく。



到着して、まずは化粧室で顔をチェック。
辛い表情になっていないか。
お化粧はきちんとできているか。
情けない顔をしていないか。
笑えているか。



エレベータに乗って目的階に着く。
初めての場所なので案内されながら向かう。



顔を見た瞬間
「?」という顔。
記憶がとんだという話を聞いていたので、
やっぱり忘れちゃったかな・・・という考えが頭をよぎったけど必死で笑顔をキープ。



でも、それも一瞬のことで。
思い出してもらえた。
「poteta〜?!(←モチロン仮名)」と回らない口が言う。
思い出してもらえたこと、話をしようとしてくれる状態なことにまた泣きそうになる。
思わず「○○さん!」ではなく「おとうさん!」と言ってしまう。
すごく嬉しそうな顔をして「おおお〜」と相手は言う。
まさに満面の笑み。
左手でがっちり握手。
やっぱり右はまだ動かない様子。



そこから小一時間。
どこまで伝わったかは定かではないけれど同期のことや共通の元同僚のことをつらつら話す。
相手が疲れてきた表情をするまでつい長居してしまった。



相手の話を理解したか、と言われると口ごもるけど
それでも楽しそうにしてくれていてよかった。



年内にあと1回行くつもり。



現実を見てしまうのがこわくていけなかったけど
これからはよくなっていく姿を見ていたい。